なぜ日本人は有休をとりたがらないのか。組織の問題と個人の問題を切り分けて専門家が解説
あなたは、自分自身の有給休暇があと何日残っているか、即答できるだろうか。
少々古いデータとなり恐縮だが、オンライン旅行サイトを運営する「エクスペディア・ジャパン」が、世界26か国を対象に実施した「有給休暇の国際比較調査(2015年)」によると、日本人が「自分自身の有休支給日数を知らない」と回答した割合はなんと全体の過半数の「53%」。
他国を大きく引き離して堂々の第1位(ワースト?)を記録した。さらには、「有休取得に罪悪感を感じる」と回答した人の割合もまた世界1位(これもワースト?)であった。それにも関わらず、「休み不足を感じている人の割合」は相対的に低いという、おそらく諸外国では考えられないであろう、
「日本人は世界で一番『休みに無頓着』である」実態が明らかとなっている。
「日本人はなかなか休まない/休めない」とのイメージは長きにわたって定着しているが、これは決して印象だけに留まるものではない。「有給休暇の国際比較調査」は毎年継続しているが、過去からの推移を見返しても、我が国の有休取得率は調査対象国中、決まって「最下位」もしくは「下から2番目」が定位置なのだ。
しかし、それから10年を経た現在はどうだろう。働き方改革も進展し、ご存じのとおり2019年4月からは我が国のすべての企業において、有給休暇の取得が義務化されている。
使用者は、条件を満たした従業員には年5日の有給休暇を取得させなければならず、違反した際には罰則もある。すなわち現在は、有休を5日取れない会社は違法なのだ。
果たして、その効果は着実に出ているようだ。厚生労働省による最新版「令和6年就労条件総合調査」によると、令和5年(2023年)の1年間に企業が付与した有給休暇の、労働者1人あたり平均日数は16.9日。このうち実際に労働者が取得した日数は11.0日で、取得率は「65.3%」となった。実はこの数字、調査を開始した昭和59年以降過去最高を記録しているのだ。
さすがに有休取得率が60%を超えたからには、海外諸国との比較でもそんなに低い位置には留まっていないだろう…と思われた読者もおられるかもしれない。
しかし残念ながら、我が国では過去最高の有休取得率でも、国際的には依然として「ワースト2位」。まだまだ日本人の有休取得率は低いままなのだ。
ではなぜ、我が国ではここまで徹底的に有休取得率が低いままなのだろうか。
それには、働く人のマインドと組織文化面、そして法制面に雇用慣行面といった複数の原因が存在しており、しかもそれぞれが複雑に絡み合っていることが考えられる。単に有休取得を法律で義務化するだけでは簡単に解消しない根深い問題がそこにはあるのだ。では、それら複数の原因について詳しく解説していこう。
ビジネス系トラブル解決の専門家・新田龍が、すべての「働く人」と「経営者」が知っておくべき「自分自身と組織をトラブルから守り、価値向上させるための知恵」を、具体的事例を基に分かりやすく解説しお届けしています。報道品質と頻度を保つため、サポートいただける方はぜひ下記ボタンから月額のサポートメンバーをご検討ください。無料でも登録できます。
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- 働く人のマインドと組織文化面
- 法制面
- 労働慣行面
- 有休取得をスムースに実現するために
- 有休がとれない組織の問題点
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